「潜在意識に残る家」
みなさん こんにちは
ネイチャー・デコールの大浦比呂志です。
今回は、潜在意識に残る家というテーマで、話をさせていただきます。
食べるものによって健康な身体がつくられるのと同じで、どういう環境で暮らすか、どういう家に住むかは、それで人を形成するといっても過言ではありません。
特に幼少期の住環境というものは、間違いなくその後の情操に大きく影響します。
たとえば、常に肌に触れる床や壁、テーブルなどの質感。
目ふれる色、部屋の日当たりや風のとおり道、天井の高低差から感ずること、
様々な素材から発する匂い、
隣の部屋から聞こえてくる音、部屋から部屋へ移動するときの温度差、
季節を感じる設え、庭の木々や植物からの匂い。
そう、それは身の回りの暮らしに関わるエレメントのすべてです。
そう考えると、五感に感じるものを、
いかに丁寧に創り上げていくかは、とても重要なことです。
そしてその五感の感じ方はひとそれぞれ違うもので、
何が一番いいのか、という正解もありません。
きっと、今まで自分がやってきた家創りとは、そうした個々の五感に耳を傾け、
それを紡ぎ合わせて、どこにもない世界にひとつだけの空間を創って来たように思います。
住宅にもトレンドがあります。
スペックや性能重視だったとき、自然素材など素材重視であったとき、何々スタイルといったデザイン様式が重視のとき、そしてここ最近シフトしてきたのがライフスタイルや暮らし方重視、いつもその時々の世の中が仕掛ける住宅のトレンドをいままで見てきましたが、どうも自分の目指す方向がそれだけにはおさまらないな、、とずっと思い続けてきました。
五感という目に見えないものをどう設計に落とし込むか、やはりここがもっとも大切な事なんでしょう。素材もデザインもスペックもライフスタイルも、それは単なる手段のひとつである、と考えるべきだと思います。
出来上がった家を買うのではなく、だれかのお仕着せで作るのでもない
自分に合わせた家を創る、まさにそれが本来の家創りのあり方であり、もっというと
自分にあった家で、こんな人生がおくれる、というのが本当のあるべき正しい姿なんでしょう。
ちなみに、僕自身が幼少期に育った家は借家でした。
その借家は、昭和の初期の頃どこの町にもあったような床屋さんを改装した汚い平屋の家。
子供の頃は、お前の家は床屋〜!と言われるのがなんとも嫌でしたが、いま思うと、その家は
床屋特有の押し出し式の連窓で、そこには透明ガラスではなくモールガラスが入っていたり、
壁や床の一部には昭和の頃によくあった21ミリ角位のモザイクタイルが貼られていたり、
腰壁にコペンハーゲンリブのような化粧板が施されていたり、
待合を兼ねていただろうエントランスが広めの玄関になっていました。
その床屋の空気感や家を取り巻く環境はいまでもしっかりと脳裏に焼き付いています。
親はなんの意図もなく、当時その古い床屋の改装された家を選んだのでしょうが、
自分の中の原風景としていまでも残っているその光景は、間違いなくいまの自分を形成している
ひとつになっていることでしょう。
大浦比呂志(ネイチャー・デコール主宰)
ネイチャー・デコール www.nature-decor.com