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Story No.4

三度目の家物語

神奈川県の平塚市、平屋で約75坪の家。70代のオーナーさんの家、というのもはじめての経験かもしれない。また、誰もが知っている著名な建築家に依頼した二軒目の家に満足いかず、今度こそ本当に「終の住処」となる家を建てたい!そんなスタートではじまったこの三軒目の家創り、色々な高いハードルを越えながら、この家もまたいつもとひと味違う特別な思いがある家となりました。二軒目の家が、作品性の高い美術館のように無機質な建築物。この三軒目の家は、「血の通った家にしたい!」と、その作品住宅を最初に見たとき、自分の家創りに対するテーマが決まりました。そして、住み始めてしばらく経ってこの家に訪れたとき「以前の家とは対極の家だよ!うちのかみさんがとにかく気に入ってる」とオーナーから温かいお言葉をいただき、ようやく肩の荷が下りた、、正直、そんな思いでした。

オーナーさんのこの家物語 オーナーさんの「この家物語」

3度目の家になります。
自宅の在り方については自分の仕事や家族構成、交友関係、近所の環境などいろいろなことを考えて家の姿を考えます。高齢になってからの家なので平屋であること、寝室周りに浴室、ランドリー、洗面、クローゼットなど身の回り機能を集中させること、寒さ対策がしっかりしていること、様々な物の収納量があること、2台の収納ガレージがあること、くらいが希望で設計依頼した記憶があります。現代風の家屋は欲しくなかったので古材を使うことや以前住んでいた家屋の部材を新築家屋に活かして使用してくれる、というネイチャーさんのやり方はとても気に入りました。
このような発注方法がとれたのは今の自分の状況だからできたのだ、と改めて感謝の気持ちを抱きました。
◉完成したときの感想
新築感の無さがとても良かった。つまり借りてきたネコ、のような状態でなく家に対して親しみやすく自然な感じで入居したような気がします。
◉施工を担当された工務店さんと設計方のコンビネーションがとても良い印象がありました。
家は完成して引き渡されたらそれでおしまい、というのは最も避けたい関係性です。住み馴れてゆく過程で様々な修正を加えてゆくことで「住まい勝手」が生まれてくるはず。施主⇨設計方⇨施工者の間にそのような関係が不自然さなく醸されたらそれは成功、といえるのではないか?と思いますがその点についても大変満足しています。

設計者のこの家物語 設計者の「この家物語」

この家創りを通して痛感したことは、家は年齢に応じて向き合い方が変わってくるもの、元気な若い時期に建てた家がはたして年齢を重ねていったときにどうなのだろう、こればかりは実体験としての想像がなかなかつかなくて、正直、いつもとは違うつまずきと自分自身の設計経験の若さを感じずにはいられないプロジェクトとなりました。

オーナーは70代のSさんご夫婦、今まで建てた二軒の家は満足のいくものではなく、今回が三軒目となる家を自分たちにとっての終の住処にしたい。そんなオーダーからはじまったSさんの家。そして今の家を参考に見に行かせてもらうと、なんとビックリ、その家の設計は誰もが知っている著名な建築家が建てたとても立派な家であった。作品性の高い美術館のようでもある建築物。本来建築家の家に住むということは、その作風が気に入りその建築に合わせて住む、という考え方もあるようだ。なるほど、このあたりに息苦しさを感じてネイチャー・デコールの扉を開けてくれたんだな〜と、この時、理解出来ました。

前の家が「作品性の高い建築家住宅」ならこの終の住処は「血の通った家にしよう!」

そんなテーマが僕の中で固まりました。なにかと、とても高いハードルは感じるものの、相手も感覚的に何かを感じて僕を訪ねてきてくれたのだから、ここはいつも通りの楽しいセッションになるよう、ガンガンネイチャー・デコールらしさをぶつけていくような提案をしていこう、と。そしてこのプロジェクトのゴングが鳴りました。

ところがなかなかいつものような、コール&レスポンスな流れが作り出せません。

ゾーニングについても、素材についても、デザインについても、住宅性能についても

Sさんには過去の苦い経験を克服したいという強い信念と、頑ななまでの世界観をお持ちで、

いつもならそれを取り入れながら更に広げていく作業をしていくのですが、それもスムーズにいかない。それが工事の終盤戦では大きな意見の衝突から「もう、お前の顔は見たくない!」とまで発展し、良い家を創ろう!という同じ方向を向いているのに、どんどん悪い方向に行ってしまう。これは自分にとってもはじめての体験だったかも知れません。

最終的にはある部分は強引に、またある部分ではリクエストもそのまま受け入れなんとか引き渡しまで漕ぎ着けた訳ですが、自分の中ではもうここまで来たので実際この家に住まわれて体感して下さい!心の中ではそんな想いで引き渡ししたのを覚えています。

この経験で感じたことは、どういうスパーンで家創りを考えていくか、ということ。

夢に溢れた若い時期に建てた家を、その時のテンションのままでその家に住み続けられるかどうか、確かに自分の中で変わらないもの、やり続けてきたことが自分たちのライフスタイルとして一本筋を通しそれを家創りに反映していくことが、オリジナルなその家族の家創り、と言う気持ちは変わらないが、

人生も後半戦になった頃、家に掛かる費用を極力抑えていくためには、メンテナンス性の良い(経済性の良い素材の選定)であったり、水廻りの機能性を集中させ寝室に近く、寝室も出来れば皆がいつも集まるリビングの近くで、人の気配を感じて暮らせるゾーニングであったり、冷暖房設備にランニングコストが掛からないための気密・断熱といった住宅性能。

ここまでの長期的スパーンで考えた家を真剣に考えていかないとならない、と言うことを強く勉強させられました。

そのような結果から生まれた家なので、住み始めてしばらく経ってこの家を訪れたとき「以前の家とは対極の家だよ!うちのかみさんがとにかく気に入ってる」とSさんから温かいお言葉をいただけたとき、ようやく肩に荷が下りた、、正直、そんな想いでした。

でもあまのじゃくなSさん「暖炉なんて面倒くさくて全く使ってないよ〜」とまた余計な一言が。。

ホント憎めないやんちゃなオヤジさんです(笑)

この物語のおうちの写真

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